HHL
連立一次方程式 を解く量子アルゴリズム。 Harrow、Hassidim、Lloyd が 2009 年に提案した。
が次元、 が疎性、 が条件数。 古典の に対し、 について指数的に速いように見える。
仕組み#
- を用意する
- 量子位相推定で の固有値を取り出す
- 固有値の逆数を振幅に載せる(制御回転)
- 位相推定を巻き戻す
に対し を作る、という発想。
但し書きが多い#
「指数的に速い」を額面通り受け取ってはいけない。 Aaronson が整理した注意点。
| 条件 | 内容 |
|---|---|
| 入力 | を効率的に準備できる必要がある |
| 出力 | 得られるのは という量子状態。全成分は読めない |
| 疎性 | が疎でなければ加速が失われる |
| 条件数 | に依存。悪条件だと遅い |
出力が量子状態なので、 の全成分を知りたいなら 回の測定が要り、加速が消える。 のような要約量を求める用途に限られる。
量子機械学習への影響#
HHL は一時期「量子機械学習」の基盤として注目されたが、 Tang らによる脱量子化 (dequantization) の研究により、 同様の仮定を置けば古典アルゴリズムでも 同等の計算量が達成できる例が複数示された。
これにより、期待されていた加速の一部が失われた。 入出力の仮定が加速の源だったという教訓を残した事例。
参考文献#
- Aram W. Harrow, Avinatan Hassidim, Seth Lloyd. Quantum Algorithm for Linear Systems of Equations. Physical Review Letters 103(15), 2009. https://doi.org/10.1103/PhysRevLett.103.150502
- Scott Aaronson. Read the fine print. Nature Physics 11, 2015. https://doi.org/10.1038/nphys3272
- Ewin Tang. A quantum-inspired classical algorithm for recommendation systems. STOC, 2019. https://doi.org/10.1145/3313276.3316310