ボルン・オッペンハイマー近似
核を固定して、電子だけの問題を解く近似。 量子化学のほぼすべてがこの上に成り立っている。
根拠#
陽子は電子の約 1836 倍の質量を持つ。 そのため核はゆっくり動き、 電子は核の配置に瞬時に追随するとみなせる。
数学的には、質量比 を小さいパラメータとする 摂動展開として正当化される。
何が得られるか#
核座標 をパラメータとして扱い、各 で電子の問題を解く。
がポテンシャルエネルギー曲面 (PES)。 これが得られると
- 平衡構造(PES の極小点)
- 結合エネルギー(極小点と解離極限の差)
- 反応経路と遷移状態(鞍点)
が求まる。PES を求めることが量子化学の主目的と言ってよい。
破綻する場合#
電子状態が近接するところ(円錐交差、非断熱遷移)では 近似が破れる。光化学反応、電荷移動などが該当する。
量子計算での位置#
VQE で計算するのは 固定した核配置での電子エネルギー。 PES を得るには核配置を動かして繰り返し計算する必要があり、 その分だけコストが掛かる。
参考文献#
- Attila Szabo, Neil S. Ostlund. Modern Quantum Chemistry. Dover, 1996. https://store.doverpublications.com/products/9780486691862
- Trygve Helgaker, Poul Jørgensen, Jeppe Olsen. Molecular Electronic-Structure Theory. Wiley, 2000. https://doi.org/10.1002/9781119019572
- Max Born, Robert Oppenheimer. Zur Quantentheorie der Molekeln. Annalen der Physik 389(20), 1927. https://doi.org/10.1002/andp.19273892002