電子相関
Hartree-Fock が取りこぼす、 電子どうしが互いを避ける効果。
小さいが決定的#
全エネルギーに占める割合は約 1%。 しかし結合エネルギーや反応エネルギーはこの範囲に入る。
| 量 | 大きさ |
|---|---|
| 全エネルギー | 数百 Hartree |
| 相関エネルギー | 数 Hartree |
| 化学的精度 | Hartree |
大きな数の小さな差を精密に求めるという構図が、 量子化学計算の難しさの本質。
2 種類#
| 種類 | 内容 | 現れる場面 |
|---|---|---|
| 動的相関 | 電子が瞬間的に避け合う | 常に存在 |
| 静的相関 | 複数の電子配置が同程度に効く | 結合の解離、遷移金属 |
静的相関が強い系では、 単一の Slater 行列式では出発点として不適切になり、 HF ベースの手法が破綻する。 多参照計算が要り、古典的には特に高価。
古典的な取り込み方#
| 手法 | 特徴 |
|---|---|
| MP2 | 摂動論。安価だが精度は限定的 |
| CCSD(T) | 「黄金律」。動的相関に強い。 |
| Full CI | 厳密。指数的 |
| DMRG | 静的相関に強い。1 次元的な系で有効 |
量子計算が狙うところ#
Full CI 相当を多項式時間で、というのが期待。 特に静的相関の強い系(遷移金属錯体、窒素固定の FeMo コファクターなど)は 古典手法が苦手とするので、有力な標的とされる。
ただし現時点では、 古典の DMRG や選択 CI が改善を続けており、 量子側の優位性は確立していない。
参考文献#
- Trygve Helgaker, Poul Jørgensen, Jeppe Olsen. Molecular Electronic-Structure Theory. Wiley, 2000. https://doi.org/10.1002/9781119019572
- Sam McArdle et al. Quantum computational chemistry. Reviews of Modern Physics 92(1), 2020. https://doi.org/10.1103/RevModPhys.92.015003
- Yudong Cao et al. Quantum Chemistry in the Age of Quantum Computing. Chemical Reviews 119(19), 2019. https://doi.org/10.1021/acs.chemrev.8b00803